テクニックは技術や技法、または手法と訳される。
あるパッセージを正確に弾けるように訓練すること、これは基本的なテクニックの習練となるけれど、ある程度それがものになってきた時、又はある程度ピアノ歴のある人が弾く場合には、テクニックとは、ここのパッセージではこんな音が欲しい、こんな雰囲気の音空間を醸し出したい、など自分の求めるイメージの音を出すための、"テクニック"を意味してくると思う。
私の大学時代のピアノの恩師のレッスンでは、毎回弾いてくださる音色のアイディアに、純粋な感動があって、その美しさへの感動を自分も再現してみたいという想いを出発点に、勉強を続けられた幸せな時間であったことを懐かしく振り返る。
指から指への内部の力の移動に対する、ちょっとしたアイディアや意識の仕方、譜面の書かれ方と実際の指の運動とを違う角度から捉えてみることで、難問が解けたように、出来た!という瞬間に遭遇する、ミクロレベルの成功体験に充足感を覚えていた。
特にフランスの作曲家の作品を演奏する際の、音色のパレットを増やす作業によって、気づけばこれまで不完全だった、脱力の問題も徐々に解消されていくのと同時に、自分の内に在ったけれど、まるで閉じ込められていたように感じていた、こう歌いたいというのものを、以前より表現できていることがとても嬉しかったし、ドイツ系の作品群を弾く際にも非常に役に立ったことを思い出す。
自分の感じているものをテクニックがあることによって表出できるようになることが、ピアノレッスンを継続していくことによって得られる収穫だと個人的に感じる。
自分流でやり続けることで陥りやすいテクニックの癖のようなものは、後々に修正することは意外と大変かもしれない。
学生の方や大人の方々は特に時間的な制約が多いと思うので、レッスン毎に新しい小さな発見をしてもらえるように、レッスンを積み重ねていきたい。